神戸山手大学

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神戸山手大学 都市交流学科 河上邦彦教授「中国に見る日本文化の源流」


[ 第5話 舌だし鬼面図 ]
※写真をクリックすると大きい画像がご覧いただけます。

獅子の図面
舌を出した獅子
舌出し鬼面の図面
舌出し鬼面の図面2

※この4つは藤ノ木古墳の文様図

 中国でも鬼の表現が始まるのは、南北朝の北魏の時代からである。
その文様が顕著なものは、瓦である。 いわゆる鬼面文瓦だ。北魏の首都であった洛陽の郊外の漢魏洛陽城の跡地(漢と魏時代の城跡)を歩いていると、蓮華文瓦に交じって鬼の顔を描いた瓦が落ちていることがある。
この鬼面には舌を出しているものがある。通称「舌出し鬼面文」という。
動物が舌を出したモチーフは、かなり古くからあるようだ。


 たとえば、漢代の楚の国の墓の中の奇っ怪な動物の木偶は、長くのびた舌をだらりと垂らしている。表面を赤と黒の漆で塗り分けて、異様な様をより際立たせている。
墓の中に入れられていることから、これらの木偶は、辟邪の意味をもっていることが分かる。
つまり、外からのもののけや悪霊を威嚇ているのである。


南朝の舌出し獅子
舌出し獅子

 最近はあまり見なくなったが、わたしたちの子供の頃、いやな相手に対して「あっかんベー」をしたものだ。その際、必ず舌を出す。これと同じだ。もともと、相手を威嚇する仕草のようである。
舌出しのモチーフは、ユ−ラシア大陸の全体に広がっていて、各地に見られる。そして、わが日本でも当然である。
藤ノ木古墳の馬具の文様の中にも、舌出し鬼面が二カ所にあるのだ。
膝を立てて、尻を落として顔を前に突き出した状態で座った鬼(動物)が、舌を出しているのがよく表現されている。北魏は藤ノ木古墳の時代よりも少し前だ。
この文様だけからいえば、この馬具は北魏の影響を受けているということができる。


 また、藤ノ木古墳の馬具の文様の中には、獅子文様もある。獅子が初めて出てくるのは、南朝の梁時代からのようだ。南朝の斉国の時代までは、墓前の石獣は「天禄」であるが、梁になって獅子に変わるからだ。

藤ノ木古墳獅子
藤ノ木古墳・舌出し鬼面

 前回の鬼神文といい、舌出し鬼面文や獅子文等の、藤ノ木古墳の馬具文様は、中国の南北朝の文様の集大成のようである。
このような、すばらしい文様をもった馬具がなぜ、六世紀の日本にあるのか。

 文献によれば、大和政権は南朝に対して朝貢外交をしている(五世紀代)。
その南朝の文様が刻まれた馬具が日本で出土しているのだ。南朝からもたらされた馬具と考えたくなる。しかし、この頃、大和政権は南朝と国交を断絶した直後くらいである。ただ、百済は国交を保っていたから、南朝(文様)→百済(馬具)→倭(馬具)との流れで考えるのが妥当であろう。


 しかし、その百済に同様のものがないとすれば馬具の出土地で製作されたと考える方が自然ではないか。藤ノ木古墳の馬具は、南朝、百済の影響を受けた日本製ではないかと考えることも必要である。


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